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俺が地下鉄に乗って、どのくらいが経過しただろうか。
小一時間で着く目的地の筈なのに……
俺は何処に向かっているのか……
ただ、家に帰る為なのに……
明らかに知らない駅名が続いている。
そもそも、俺が帰宅するのに、地下鉄を利用する必要はない。
第一、俺の住む地域に地下鉄など、走っていない。
何より、俺はこのような列車に乗り込んだ覚えさえない。
いつの間にか、俺は列車の長椅子に腰を下ろしていた。
身に覚えのない、不可思議な列車に揺られていたのだ。
疎らではあるが、俺の他にも客はいた。
しかし、彼等は皆、普通ではなかった。
青ざめた、死人のような顔つきのもの
ゾンビの如く全身が腐敗するもの……
白い死に装束を纏うもの……
服を着た白骨……
そう、とてつもなく古びた客車の中、横に伸びる長椅子に腰を下ろしていた俺はいつの間にか、死人達に囲まれていたのだ。
彼等は俺にかまうこともなく、ただ、ただ、俯いたまま、列車の揺れに身を任せていた。
俺は死人達と目を合わさぬよう、窓の外に目を向ける。
そこは、荒れ果てた荒野であった。
どんよりとした雲に覆われた夜空の下、時折見えるものは墓場くらいのものだ。古典的にも、火の玉なぞが飛んでいやがる……
そう、地下鉄にも拘わらず、外に景色が広がっていた。
それもその筈……
俺が乗っている列車は、地下は地下でも、[あの世に通じる地下世界]を進む、幽霊列車なのだから……
それでも、俺は恐怖を感じることはなかった。
何故なら……
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