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墓石と卒塔婆が無数に並ぶだけの、闇の荒野が延々と続く中、唯一光を放つのは、俺を乗せた列車の窓から見える窓だけだった。
古めかしい作りの幽霊列車は、ガタゴト揺れながら、一本しかない線路の上を走り続けていた。
退屈になった俺は、腕を後ろ手に組みながら、扉の上にある路線図を示したプレートを読んでいた。
あの世と云っても、色々な駅があるものだと思わされた。
――地獄ヶ丘、ヴァルハラ平、ヨモツヒラサカ三丁目、ニライカナイニュータウン、常世町……
最後に停車した普通っぽい駅以降に続く、如何にも[それっぽい]様々な駅名に思いを馳せつつ、俺が疑問に感じたのは、自分が一体、何処を目的地にしているかがわからないと云うことだ。
実は、この列車は俺の家がある筈の駅にも停車していた。しかし、[宇宙の都]とも聞こえるその駅におりようとしたとき、新たに乗り込んでくる大勢の死者に阻まれ、果たすことが出来なかった。
――まったく、降りる奴を優先するのがマナーだろうが!
憤りを感じつつも、よくよく考えれば、死者が生者の駅に降りることはあり得ない。俺は、改めて自分が死んでいることを実感した。
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