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何より、他の死者との最大の違いとして、少女はニコニコと上機嫌な笑みを浮かべていた。
その理由を俺が尋ねる前に、少女はうれしそうに、一枚の切符を見せびらかした。
来世駅――
切符の行き先は、この列車の終点を示していた。
「私ね……もう一度パパとママの所に生まれてもいいって!」
身体が弱く、不治の病で命を落とした少女は、同じ両親の元で、新たな命として生まれ変わる権利を得たらしい。
暗い地下を進む列車の中、俺は光を見たような気がした。
「良かったね……」
そう言って俺が頭を撫でてやると、少女は目を細めて笑った。
しかし、端から見たら、犯罪だよな……
そして、俺は気が付いた。
――俺……切符、持っていない!?
そうなのだ。どのポケットを探しても、切符らしいものがどこにもないのだ。もし、先の車掌が俺との会話で切符の確認をし忘れていなければ、果たしてどうなっていただろうか……
そして、切符のない俺は、どこの駅で降りればよいのか、それさえわからなかった……
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