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 午後四時、もう卒業式を残しただけの高校三年生の下校時間。足元の雪を踏みしめ一人家路をたどる。 「痛い」  今感じたことを素直に口に出す。すかさず口に堅い雪の粒が入り込む。僅かなざらつきと苦みが口に広がる。勝手な想像で少し甘いのかと思っていた私が『雪って苦いんだ! 』少し驚く。  ぴりぴりと頬が痛い。寒さに顔の皮膚がこわばり、そこに横殴りの固い雪の結晶が当たっているのだと気づく。しかも、いつも目深に被っているはずのフードを跳ね上げたまま歩いていた。痛いはずだと妙に納得する。すぐにフードを被ればいいと分かっているのにわざとそうしなかった。今の私にはこの状態がふさわしいと思ったから。なにより何でもいいから生きているという何らかの感慨と外からの刺激をなぜか欲していた。
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