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「あの、すみません。」
嫌な予感は当たるもの。制服姿の警察官が座っている俺に声をかけてきた。
「はい。」
額に冷や汗がにじむ。しかし、警察官の投げてきた言葉は意外なものだった。
「そこに落ちているの、お宅のですか?」
警察官は俺が座っていたベンチの下を指さした。革製の財布が落ちている。全く身に覚えがない落とし物だ。
「……いえ」
「では、誰かの落とし物ですね。」
「みたいですね。私、財布は持たない主義だから。ハハッ」
警察官はすっと拾い上げると、きょとんと見ていた大介に
「いいね、パパとお出かけ?」
と投げかけた。
あっ、その言葉。パパのいない大介には禁句だ……
思わず大介を見る。
しかし意外にも、大介は今までにないほど、楽しそうな笑顔を浮かべた。
「うん!」
ひまわりのような、大きな笑顔でにっこり。
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