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「なぁあにい?おじさん、地下鉄も乗れないのぉ~~~?」
最後は挑発じみた口調でこちらを見据えている。なんだかその口調が、ホームレスになる前の、叶わぬ願いは無い、と思っていた頃の俺にすごく似ていた。
―予算千円か。ここから初乗りはいくらだろう。だから、…まず身なりを…
男児の言葉に、頭の片隅で俺の頭の計算機が動き始めてしまっていることに、思わず吹き出してしまった。
なるほど。俺もこの状況を楽しんでいるわけか。
「わっ、おじさん口臭い!歯も磨いてよ。」
男児が噴出した息にむせながら減らず口をたたく。
俺は、わざと、にんまりと大きく開いてやった。
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