地下鉄は私を連れて行く。

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 あの日、どこに行ったのかは覚えていない。  ただ、目的地につき、地上にあがったところでほっと安心して、大泣きしたことを覚えている。  両親はさぞや慌てたとこだろう。  私にとって地下鉄は未知の乗り物で、恐怖の対象だった。  それは今も、で。    階段を駆け下り、閉まりかけたドアに体をねじ込む。これを逃したら遅刻だ。  今の私は、地下鉄に毎日乗っている。地下鉄に乗って会社に行っている。  暗闇の中、灯りが流れていく窓の外。少しずつ、胃が痛くなってくる。  昨日も一昨日も、帰りは終電だった。今日は少しははやく、帰れるだろうか。  人が大量に乗ってきて、押しつぶされる。  地下鉄は、怖い。  毎日毎日私を会社へ連れていく。死刑台へ運ぶかのように。  まだ見知らぬ場所に、地獄に連れて行ってくれる方がマシだった。  今日は何度怒鳴られるのだろうか。  吐き気がしてくる。   何度辞めたいと思ったかわからない。  でも、この地下鉄に乗らないという選択を、私はまだ出来ずにいる。
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