第一話 その日私は

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その日私は、オーナーと食事をしていた。 仕事の打ち合わせも兼ねて。 これはもう三か月ほど前から予定されていたものである。 当時私は、とあるパワーストーンのお店に勤めていた。 パワーストーン好きであったが故に、 行きつけのお店でたまたまスタッフを募集していたのがご縁だった。 打ち合わせ内容は、今度占いのメニューを取り入れようというので、 相場の料金と時間、どのように告知していくか、など ごく一般的な内容である。 私はその頃週3日程度電話占いの会社に所属していた。 その為、私に占いを任せたい、という話だった。 個人オーナー店の為、 オーナーとスタッフの距離感はほとんどなく、 アットホームな雰囲気だった。 少なくとも表向きは…。 どんな場所にも、光あれば影が出来る。 物質界とはそういうものである。 そのパワーストーンショップも然り。 スタッフは、店長と私の二名のみ。 どちらかがお休みの際は、オーナーの奥様が入って下さった。 オーナーの奥様は、小柄でポッチャリした可愛らしい方だった。 目が大きくてウルウルしていて、マショマロみたいなふんわりした肌。 ポッテリと厚い唇。 まさに、男受けしそうな女性で、年の頃は45歳。 オーナーは背が高く、スリムで眼鏡が似合うインテリ男性、 といった感じか。年の頃は48歳。 店長から伺った話だと、お二人とも良家のお嬢様お坊ちゃまらしい。 ほとんど興味の無い話であったが。 店長は痩せて細い、 黒髪、奥二重の大人しそうな女性で、年の頃28歳。 そんなメンバーだった。 私はお気楽に、大好きなパワーストーンに囲まれて、 ブレスレット作成やペンダントなど、物作りが出来る事。 そして占いの対面実績が増える事。 それが何よりも嬉しくて楽しくて、これしか頭になかった。 だから、そのパワーストーンのお店に常連として 利用している時から感じていた「ある感覚」を、気のせいにして流していた。 その「ある感覚」とは…。 それは誰しもが持っている「感覚」。 いわゆる「五感」というものである。 ある人は嗅覚が。ある人は触覚が。 ある人は味覚、ある人は聴覚、またある人は視覚。 これらのどれか一つ、または複数、得意分野がある筈なのだ。 ちなみに、私の場合は聴覚、視覚が鋭く、 加えて感情を感じ取る感覚が得意のようだ。 例えばこんな感じだ。
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