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「・・・・ハメやがって」
恨めしげな視線を向けると、圭輔は相変わらずたのしそうにフフンと笑った。
「そーゆー可愛げのないこといわないの。もし合コンになんていってたら、夜中におまえンち乗り込んでいってるところだぜ?」
「・・・・」
「まあ、そんときは気絶するくらいのキスじゃ済まないわな」
「・・・・冗談」
・・・・では、ないよな。
ハハ、と引き攣った笑みを向けてみても、にやりとした嫌な笑みを浮かべた圭輔の顔は、本気モードだ。
マジで勘弁してほしいんだけど。
「とゆーわけだから」
「ッ!」
「以後、行動は慎むように」
いいながら、俺の半開きの唇をぺろりと舐めて、圭輔は口の端を吊り上げた。
眼が笑ってないのは気のせいか・・・・?
半ば放心状態の俺の頭をくしゃりと撫ぜて、圭輔は立ち上がった。
「今夜は鍋焼きうどんだぞー」
スキップでもしそうな勢いでキッチンへと向かう背中を呆然と眺めながら、再びソファーに沈んだ。
もう、なんていうか、すべて圭輔ペース。
それにすっかり巻き込まれてる自分も大概愚かだとは思うけど。
「ヤベェ・・・・」
このまま圭輔のペースに巻き込まれてたら、俺の貞操が危うい。
背筋にゾワリと悪寒を感じながらも、トントンとキッチンから響くリズムカルな包丁の音が、不思議と心地よくて。
ここで寝るのは命取りのような気もするけど・・・・けど、今日は疲れた。
小さく欠伸を噛み殺して、クッションを抱きしめた。
このまま流されるわけにはいかない。
あの男、いつか絶対見返してやる。
まあ、できるかどうかは微妙だけどな・・・・。
そんなことを思っているうちに、俺の意識は完全に撃沈した。
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