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『今夜七時集合』
突然送られてきた愛想もクソもないメールがコレだ。
おもわずフリーズして立ち止まった自分に、秀人と伸広が不思議そうに首を傾げた。
「おい、雅通。どーした?」
「いや・・・・ちょっと、ワリ。電話」
慌てて携帯を掴み、ふざけた名前のままのフォルダから番号を引き出す。
「先いってるぞー」という二人に片手を上げて、柱の陰に身を隠した。
プルルルル、プルルルル。
いまさっきメールを送ってきたばかりだというのに、なかなか電話に出ようとしないこの男はいったいなんなんだ。
きっと今頃、鳴り続ける携帯を見つめながらにやついているに違いない。
携帯を耳に当てながら、冗談じゃねえ、と毒ついた。
厄介なうえに手に負えない。
この圭輔という男は。
苛々が最高潮に昇ったとき、数十回目のコール音で耳元に呑気な声が響いた。
『はいはーい』
「ちょ・・・・ッ!圭輔さん!」
『あんまり怒鳴ンなよ。耳に響く』
「わかってんなら、さっさと電話出てくださいよ!」
『いやぁ、おまえから電話くるなんてうれしくってねぇ?。ついつい出そびれちゃった』
悪びれもせずケラケラと響く笑い声に、堪らずガクリと肩を落とした。
数ヶ月前に仲間とノリで訪れたゲイバーで出会ったこの男は、なにを血迷ったかただのごく普通の大学生の自分を気に入ったらしい。
ノンケだと知りつつ、「一目惚れ」とほざくこの男はどうみても血迷っているとしか思えない。
それでもその日、貞操は辛うじて守り通したものの、人生で初めて男にお持ち帰りされるという事態に見舞われた。
男の自分が見てもとてもじゃないが相手に苦労している容姿とは思えないのに、なんで自分なんだか・・・・。
放っておけばそのうち飽きるだろうと、軽く考えていたけど、その考えはとてつもなく浅はかだったと、数ヶ月経った今現在痛いほど痛感している。
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