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「雅通?」
抵抗すらしなくなった俺に気づいた圭輔が、首を傾げながら身体を離した。
その瞬間、立っていられなくて、そのままズルズルとしゃがみ込んだ。
「そんなによかった?」
愉快そうな声が響く。
けどその声すらなんだか遠くに聞こえて。
「・・・・圭輔さん・・・・」
「ん?」
「俺・・・・もー、ダメ・・・・」
「は?って、おい、雅通!」
その瞬間、俺は人生で初めて気を失うという体験をした。
「おまえねー、酸欠で気絶するってどうよ?」
「・・・・」
なにも言い返すことができず、ソファの上で丸くなってクッションを抱きしめた。
情けないったらありゃしない。
いくら全力疾走をしたあとだといっても、濃厚なキスをされたくらいでぶっ倒れるだなんて・・・・。
アホだ、我ながら、アホすぎる・・・・。
情けないうえに、恥ずかしすぎる・・・・。
「まあ、俺に会うために急いできてくれたってとこは可愛すぎるけどな」
「誰が・・・・」
おもわず眉を顰めてクッションの間から顔を上げると、こちらを覗いていたらしい圭輔がにやりとした笑みを浮かべた。
「圭輔さんが一時間以内にこいっていったんでしょ・・・・」
「まあ、いったけどなー」
「だから急いで・・・・・・・・って、アレ?」
・・・・なんで俺、あんなに走んなきゃいけなかったんだ?
たしかに圭輔は一時間以内にこいとはいったけど・・・・。
いったけど・・・・。
ハッと気づいてガバリと起き上がった。
間近にある圭輔の顔が、にやにやとした愉快そうな笑みを浮かべているのを見て、自らの愚かさを知った。
「雅通のそーゆー素直な性格は、実によろしい」
「・・・・・・・・」
たのしそうに笑う圭輔を見て、ガクリと項垂れた。
素直・・・・いわゆる単純ってことだろ。
合コンに乗り込む、なんていった圭輔の口車に乗せられて、このザマだ。
はっきりいって圭輔の言葉なんて無視したってなんら問題になんてならなかったわけで。
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