逮捕

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逮捕

 修司は毎日、地下鉄に乗って会社へ通勤する生活をしている。  修司が使っている地下鉄は、私鉄相互乗り入れをしている路線だった。  自宅最寄り駅は私鉄路線区なので、彼が普段使う最寄り駅も、普通に地上駅である。  そこから途中、電車は地下に潜り始めて、地下鉄となる。  地下鉄は地下を走っているために、景色がまるで無い。車窓を見つめても、真っ暗な暗闇と、ガラスに写り込む自分の顔が見えるだけだった。  その他の情景と言えば、車内に流れる車掌の次の駅を伝えるアナウンスだけだ。  地上の電車ならば、うっかり席で寝入ってしまい「寝過ごしたか!?」と焦って起きた時でも、周りの風景を確認することで、寝過ごしたかそうでないかを知る事が出来る。  しかし地下鉄では風景がないので、車掌のアナウンスを聞くまでは寝過ごしたのか?そうでないのか?安心はできないのだ。  私鉄区間は車窓に綺麗な景色が流れるため、この相互乗り入れ地下鉄は、暗闇と風景、その両方のコントラストがあるので、余計に地下での暗闇が強調されるような気がした。
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