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そんなことを考えながら日々の通勤をしていた修司は、ある朝、自宅へ押しかけて来た警察に、突然逮捕されてしまった。
容疑は窃盗だというのだが、自分には全く身に覚えがない。
家族にはとにかく、
「自分はやってない!無実だ!」
と訴える事しか出来なかった。
家族の表情が自分を信じてくれている目をしてた事だけが、唯一の救いだった。
あの家族が見せてくれた信頼の眼差しを頼りに、自分はこの訳の解らない突然の逮捕にも、戦っていける決意のようなものが出来た気がした。
警察の取り調べ室に入ると、事件の概要が伝えられた。
修司に盗まれたという被害者の男は、弁天寺駅から八幡台駅までの間に盗まれたと言っているらしい。
被害者は電車内で居眠りをしていたのだが、弁天寺駅のアナウンスが流れた時に目を覚まし、その時には盗まれたカバンが確実にあったのを確認しているという。
その後疲れていたのもあり、再び眠りにつき、自分の下車駅である八幡台駅で、気づいたら無くなっていたのだった。
盗られたカバンの中には定期も入っていたので、この人物が狂言を言ってるとしても、自分が定期を使えず本当に不便になってしまうので、狂言をしているという可能性も薄いらしい。
その日のうちに、弁天寺駅と八幡台駅の間で、盗まれたカバンが、中身から金目の物だけを抜いた状態で発見されたらしいので、ただの落とし物という可能性もないそうだ。
そして警察の捜査によって、その区間の間では、被害者が乗ってた車両に、修司と被害者の二人きりだったというのだ。
つまりカバンを盗むのが可能だったのは、修司だけだというのである。
こうして、警察による修司への執拗な取り調べが、連日始まったのであった。
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