2人が本棚に入れています
本棚に追加
弁護士
連日の厳しい取り調べでも、修司は無実を訴えた。しかし警察は修司のいうことには一切耳を貸す様子はなく、
「お前は人の物を盗んで開き直る人でなしだ!」
「お前にも良心があるのならいい加減に観念しろ!」
と詰って来た。
それでも十分に辛かったが、一番堪えたのは、
「お前の家族も、お前の悪人ぶりに幻滅しているぞ!」
と、唯一精神的な支えに思っていた家族からも信頼を失っていると責められた時だった。
このままで精神的に耐えられない。そう弱音を吐きそうになった時に、国選弁護人の日高さんが来てくれたのだった。
修司は最後の頼みと、日高との接見の際に無実を訴えた。
日高は修司の瞳の奥に、やましさが一かけらもない綺麗な光をみつけた。
(よし、この男を信じよう、必ず真実を明らかにしよう)
と日高は心に決めた。
「解りました。私はあなたを全力でサポート致します。どんな些細なことでも良いので、私に全て話して下さい」
そう日高に言われた修司は、自分が嫌疑を掛けられている日の地下鉄のようすを、(これは事件に関係がないだろう)と思うことまで、こと細かに話した。
例えば、当日の車掌は新人なのか、常にオドオドした声で、アナウンスが澱むことも多かった。などの世間話的なものまでしていた。
「解りました。これから事務所に戻りまして、我が所員の総力を持って、真実を突き止めます!」
そう言って日高は接見室を後にした。
最初のコメントを投稿しよう!