うみからなる

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 僕の、せいだと思った。  言い出したのが汐音だとしても、僕はそれを止めるべきだった。  罪の意識に苛まれ、僕の気分がどん底まで落ちたとき。  ふっと、思い出した。 『湊、もし私が死んだら私を海に流してよ』  汐音に言われたそんな言葉を。  気がつけば僕は、汐音の元へと向かっていた。  僕らの村では、遺体は土葬する風習がある。  葬式の前の日、世の中の多くでは通夜が行われるのだろうが、この村では遺体を神社へと安置する決まりになっている。  海の神様に魂を捧げ、残った体だけを土に還すのだという。  汐音はそれに習って、お社の中に寝かされているはずだった。  お社の中に入ると、予想はしていたけれど、不気味な空気を感じた。  神聖なこの場は、親族でさえ入ることは禁じられている。  それなのに愚かな僕は、指折り数えて罪を重ねて、その重さに気づいていなかった。  少し奥へ進むと、汐音が寝かされていた。  その表情は眠っているように穏やかで、今にも起きそうだと感じるほどだった。  しかしその頭部は、隠すように包帯が巻かれていた。  激しく岩に打ち付けられて、損傷が激しかったらしい。  汐音の体を背負おうとして、転びかけた。  人の体が、こんなに重いとは思わなかった。  汐音の魂はまだここに在るだろうか。  重い、なんて言ったら汐音が帰ったときに怒られてしまう。  暫し奮闘した後になんとか背負い上げ、入り江へと向かった。  あの岩場を通るのはもちろんやめた。  時間はかかるが、安全な回り道を歩く。  ……あのときも、止めはしなくともこうすればよかった。  後悔が浮かんでは、泡のように弾ける。  ぐるぐると思考を巡らせているうちに、いつの間にか、目的地へと辿り着いていた。  正直、人を担いで歩くのは骨が折れる思いだったが、穏やかな海を見るとそんな気持ちはすぐに吹き飛んだ。
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