1話

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『新入生 退場 暖かい拍手でお送りください』 長かったようで短かった、緊張したようで緊張が解けた、そんな入学式は、終わってしまいました。 体育館から教室に戻った私達は、担任の先生のホームルームを受け、ホームルーム内でクラスごとの記念撮影が終わったあと12時30分には解散、ということになりました。 今は12時5分。 まだ担任の先生は来ていません。 とりあえず、私はわかなちゃんの言うとおりに席に戻ることにしました。 「おっ、赤飯とノートとシャーペンがあるぞかずね!もう私お腹すいた……お腹空かない?」 確かに机の上には地元の百貨店の大きい紙袋が置いてありました。 その紙袋の中には赤い風呂敷で包まれている(恐らく)赤飯と、熨斗に包まれたノートとシャーペンが入ってる箱がありました。 「そういえば……だね。でも、私のお母さん、赤飯が好きだから……持ち帰るって……今食べるの?!」 「う……うむ……おいひい……食べる?」 「えっ……じゃあ、はむっ……」 「どう?」 「おいひい!!!ほんのり暖かい!しかももちもちしてて所々入ってる豆の感触、たまらない!……赤飯、いままで食わず嫌いだったの!ありがとう!」 実は私、赤飯に苦手意識を持ってて、いままで食べたことがなかったのです。 でも……わかなちゃんから貰った赤飯のおかげで赤飯が大好きになりそうです! 「美味しいぞ。赤飯はよく試合に勝ったときとかコーチが作ってくれたな……」 「コーチ……?試合……?」 「……あ、私、元バスケ部なんだ。あの1-3の式辞を言ったやよいって子も同じバスケ部。」 「ふ、ふぇ?!そうだったのですか!」 ……だからあんなよく周りを見ていて気遣いが上手い子だったんだわかなちゃん。 「そんないい思い出はないけど……やよいには、かなり救われたんだ。同んなじ高校に進めて良かったって思ってる。」 「なるほど……私、体育苦手なので、バスケの授業とかあったら、フォローお願いします!」 「わかったぞ。しごいてやるっ」 「そ、そんなぁ……」 和気あいあいとしたわかなちゃんとのお喋りは楽しいけれど。 もう、先生が来てしまいました。一旦また先生の言うことを聴かなくては。
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