1話

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しかも、私いままで重い学生鞄をずっと持っていたので……私のかばんの中身まで廊下中に散らばってしまったのです! もう、この高校生活のスタート、いきなりドン底からなの?嫌だよぉ…… とりあえず、誰かに謝らなきゃ。 「ご、ごめんなさい……っ!」 「あ、ああ、こっちこそ、不注意で悪かった、すまん。とりあ、立とうか?あと……拾ったげようか?教室行けねぇぞ」 「う、うん……ありがとう…ございます」 そう、女の子に手を引っ張られた私は、また自分の情けなさに落ち込んでいました。 ううん。落ち込んでなんかいられない。 これは友達を作るチャンスなのでは?まず、バッグの中身をどうにかしないと。 中身を拾っている途中に、ふと私は彼女の上履きのつま先に書かれてある二文字熟語に視線を落としました。 上履きは赤色……どうやら同級生のようです。 そしてこの二文字熟語……これが実に読みにくいです。落ち込むより先に聞く事を選ぼう。 「えっとあの……なかじょう?ですか?ちゅうじょう、…ですか?」 「え?私の名前?えっと。なかしの、……中篠若菜って言うんだ。一年一組だ。よろしくな。」  ――中篠若菜なかしのわかなさん。  私より身長が一回り高くて、少し長い茶髪を緑のリボンで二つに結んでいる、雰囲気体育会系の女の子。  私と同様に、アホ毛を一本生やしているこの子となら、一緒にやっていけるかもしれません。 「こちらこそ!"なかしの"さんかあ・・・・。って、1年1組?わ、私と同じクラスだ・・・・!私、橋留和音っていうの」 「かずねか、よろしくな」 「う、うん、中篠さん、よろしくね!」 「”わかな”でいいよ」 「わ、わかった!……ところでわかなちゃん、1年1組の教室の場所って……」 「ああ、すぐそこだよ。同じクラスなことだし、一緒に行こうぜ」 あれー?おかしいおかしい!こんなに初対面の人と会話が続くなんて……! 私、前の学校では人見知りで引っ込み思案だったから、せいぜい一日に会話出来るのが部活……吹奏楽部の同じ楽器の子とのちょっとした数秒も持たない挨拶だけだったのに!
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