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「外人さん!!
どうぞ、この席に座って下さい!!!」
私は!
思いきって席を立つと、目の前に立っている外人さんに声をかけた。
私が、地下鉄のシートに座っていると…
吊革に掴まって膝を痛そうに撫でている、その若い男の外人さんが…
凄く気になったのだ。
外人さんは、ギュウギュウ詰めの車内で
時々、顔を歪めながら自分の膝を痛そうに撫でて、キョロキョロと周囲を見回していた。
「何か、大変そうだな…。席を譲ってあげようかな」
と、私は内心ではそう思ったのだが、何か『勇気』が出せなくてその外人さんの顔をただじっと見詰めてしまった。
でも…
再び、外人さんが膝を痛そうに撫でているのを見て、
たまらずに席を立ってしまったのだ。
「…エ?」
と、外人さんは変な顔をして、席を譲った私の顔を凝視した…。
「ナ、何デ…俺ナンカ二、席ヲ?」
と、どぎまぎしている。
(日本語が少し(なのかな?)話せるみたいだ)
「えっと…私!次の『〇〇駅』で降りるんです!
だから、どうぞ座って下さい!」
咄嗟に私は『嘘』をついてしまった。
と…
「オ、俺モ!
次ノ『〇〇駅』デ降リルンデスヨ!ダカラ、良イデス!ドウモ、アリガトウ!!」
外人さんは、笑顔でペコリッ!と頭を下げた。
さて。
『〇〇駅』を降りた私は、
仕方なくその外人さんと一緒に改札を抜けた。
「本当二、サッキハ、アリガトウ!俺、人カラ優シクシテモラッタノ、コノ国二来テ初メテナンデス!」
外人さんは、引き続き満面の笑顔で私に向かってペコペコと頭を下げた。
私は…
内心で「ただ、地下鉄で席を譲っただけなのに…この外人さん、オーバーだなぁ」と思いながら、
「いえいえー。
外人さんもこの国に来て、いろいろ大変ですよね。でも、日本人だって良い人がいっぱいいますよ。だから、どうかこの国を嫌いにならないで下さいね」
と、言うと…
その外人さん…
何と!
両目いっぱいに涙を貯めて!
「ソ、ソウデスネ!
分カリマシタ!日本ノ人ニハ、絶対ニ危害ヲ加エナイヨウ、俺ノ母国ノ人達ニモ、言ッテオキマス!本当二、サッキハ、アリガトウゴサイマシタ!」
と!
私に握手を求めて来たのだ!
私は、またまた仕方なく笑顔で外人さんと握手をすると彼と別れた。
別れ際、その外人さんが…
ガラケーで誰かと話しているのが見えた。
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