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そうか今日は水曜日か。曜日など気にせず家を出た私だが、乗客で曜日が分かることもある。 向かい側の座席の中央付近に品のある老婦人が座った。 濡れた傘を用意した傘袋に入れる。自らのためだけではないだろう。まわりへの配慮に違いない。 男女問わず通勤時間帯に現役をリタイアした世代が乗車する割合は少ない。 中年サラリーマンや学生は目につかないが、この老婦人のような方は少し目を惹く。 毎週水曜日に乗るこの老婦人を私は覚えてしまった。 年齢には少し派手に見える花柄のシャツにシックなスカート、いずれも高級そうな素材だ。 私はファッションには疎いが下手をすれば成金っぽく見えそうな服を上品に着こなしているのではないだろうか。 一本芯が通った背筋に凛とした佇まい。動きに無駄がない。それが服に負けない着こなしにつながっている。私はそう考えている。
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