甘い蜜と午後3時

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「俺のところにも警備はいるが、貴重品を置いてるわけでもないし、そんなに厳重にはしていないんだ。すごいのは政治家の別荘だな、近寄るだけでレーザービームでやられちまうぞ」 戯けて両手をあげる。 「いいからちゃんと運転しろよ!」 思わずハンドルを握ってしまった。それを見て笑ってる。 「心配すんな、運転はうまいほうさ」 「そういう問題じゃねぇ!」 日本にいるバカ後輩を思い出す。 せっかく離れた土地に来たのに、似たようなバカがそばにいようとは。 ため息を吐くと、突然視界が開けた。 海だ。 「うわ……!」 真っ青な海。沖縄で見た海に似てる。 淡いエメラルドグリーンが沖まで満ちて、空の青と混ざり合って水平線がどこなのかわからないほどだった。 「すっげぇ」 日本語で呟く。この時、デジカメもキャリーの中だったことを思い出す。もう記憶のカメラに刻みつけるしかない。 「こんな海は序の口さ。プライベートビーチがあるのが当たり前だぞ」 運転手は得意げだ。 「泳いでも寛いでも誰に気兼ねすることもない」 「あんたの別荘にもあんの?」 「もちろんだ、あまり利用しないけどな。プールがあるから」 「プール」 それもいいな。南の島で海やプールなんて、本当に贅沢な話だ。 「もうすぐ到着だ、ゆっくりしてくれ」 海が見えたあたりから、明らかに周囲の景色が変わってきた。 道の舗装がされ、高い壁の家が増えてきた。
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