甘い蜜と午後3時

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曖昧に返事をする。体を柵から離すと、腰の辺りを抱き寄せられた。 「疲れていないか?」 そのまま、頬にキスされる。 「長旅だったから疲れたんじゃないか?」 囁きながら、耳や首筋にも。 甘ったるい雰囲気を感じて、不思議とそれに順応するように、穏やかで艶かしい気持ちになっていく。バイセクシャルを自覚したから、余計そうなのかもしれない。 俺自身がこいつのことが好きかどうかはよくわからない。ただ、こいつが俺のことを本当に好きでいてくれていることは、この1日でよくわかった。 ハニーだなんだと言って陽気に暴走してたことを差し引いても、彼を不快に思ったりもしなかった。相性も悪くないってことだろう。 だからこそ、こんな中途半端な気持ちでいるのは正直心苦しい。あまりにも真っ直ぐで、曇りなく俺のことを想ってくれているから。 日本にいた時に「別に会いたくない」なんて思ってた自分を、一発殴ってやりたかった。 「少し疲れたかもしれない」 申し訳なさと愛情に応えたい気持ちが混ざって、拒まずに抱きつく。腕を回したくても回りきらない厚い胸板に、体を埋めた。 「久しぶりにお前の体を拝んでもいいか?」 小さな声で言うもんだから笑っちゃった。 「野暮だな、いちいち言わせんなよ」 「一応、マナーだろ」 「なんで急に紳士になんだよ」 初めて会った時と変わらず、体を預けることに全く抵抗はない。体から少しずつ絆を深めてイイ仲になっていく。そんな途中みたいな。 そこから好きになるのかならないのか、まだわからない。
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