甘い蜜と午後3時

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「そりゃあ、久しぶりだしね」 人肌に触れること自体が久しぶりだった。 誰もいない、人目を気にしなくていいとなると、気持ちは勝手に高ぶっていく。 「もっとヤりまくってると思ってた」 それは否定できない。 「まぁ、ほどほどに?」 曖昧に言って笑う。 そのままパンツを脱がされそうになって、ちょっとの気恥ずかしさが彼の手を振り払おうとする。 その手首を、彼が掴んだとき。 突然。 縛り付けられて眺めた、暗いビジネスホテルの天井が、鮮明に頭の中に浮かんできた。 あの男の薄ら寒い笑い声とともに。 「っ」 目を見開く。 金縛りにかかったみたいに、一気に体が硬直する。 「どうした?」 様子がおかしいことに気づいた彼が体を離す。 違う。 ここは違う。 もう1人の自分が、硬くなった体に囁く。 けれど、一度あの夜を思い出した体が、そう簡単に宥められるわけもなかった。 「あっ、あの、あ」 「落ち着け、大丈夫だから深呼吸しろ」 彼が冷静でいてくれたのが救いだ。 過呼吸気味になったのを無理やり深呼吸して、なんとか落ち着かせる。少し彼から離れた。 ほら、ここは違う。 ここは、あのホテルじゃない。 今は、あの夜じゃない。 何度も自分に言い聞かせて、少し泣いた。
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