甘い蜜と午後3時

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「落ち着いたか?」 呼吸が整ったのを見計らって、彼が声をかけてくる。 体育座りした状態で、無理やり目をこすって頷く。 「ごめん、急に」 まだ体が震えてる。 「いや、構わないが、大丈夫か?」 彼はとことん冷静に、俺と向き合ってくる。その態度を見ていると、少しずつ気持ちが落ち着いてきた。 「やはり本調子じゃないんじゃないか? 来たばかりだし、疲れているんだろう」 ほんの少し笑った。俺には触れてこない。急に過呼吸気味になったり体が強張ったりしたら、そりゃ触りたくもないか。 なんだか彼が遠くなった気がして、とても恐ろしい。大きく息を吐いて、自分の体を抱きしめた。 「疲れじゃ、ないんだ」 声を振り絞る。 彼にはきちんと話さなくてはいけないと思った。 唇が震える。 彼は何も言わず、冷静に、どこか不思議そうに俺を見つめていた。 その顔すら、まともに見られない。 「俺、あの」 最悪だ。 「俺、最近、ちょっと前に」 自分を好きだと言ってくれてる奴に、こんなこと、言わなきゃなんないなんて。 「レイプされたんだ」 口に出すと余計に惨めで、体育座りをしたまま顔を伏せた。
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