甘い蜜と午後3時

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「なんだって……?」 彼が、驚きも露わに尋ね返してくる。 やっぱり変だと思うよな、男が男に襲われて、それがトラウマになってるなんて。 俺だってこんなこと言いたくなかったよ。 「写真あったろ、アレが雑誌に載ることになって、編集者の男に成り行きで襲われて、そいつ同級生なんだけどさ」 少しずつ話す。 「薬飲まされて、朦朧としてたから、抵抗出来なかった。手錠で繋がれて、無理やり」 髪をぐしゃぐしゃにかきむしった。 「怖くて、すげぇムカついて、でも全然抵抗できなくて、無理やり入れられるし、痛いし、やめてくれないし」 彼はしばらく黙って聞いていたが「もういい」と悲しげな声で言った。 「それから女も抱いてない。人に触るのが怖いし嫌だった。やっと普通に、酒飲んだり、人と話したりするくらいはできるようになった」 「もうよせ」 「あんたにキスされても抱きしめられても大丈夫だったから、もうホントに大丈夫だと思ったのに」 「……」 急にフラッシュバックしてくる。 あの景色とあの時の音、匂い、感触。 何をしても無力で、受け入れるしかなかったあの時のことを。 「俺は」 彼が口を開いた。 「お前を抱きたいためだけに、ここに呼んだんじゃない」 穏やかな口調で安心する。 「お前と一緒に居たいんだ。少しでも寛いでくれたら、それでいい。だから」 そっと手を伸ばして、俺の肩に触れる。 「そのことを少しでも忘れられるように、俺が出来ることをしてやる」
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