甘い蜜と午後3時

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「よく頑張ったな。お前は何も悪くない。よく1人で耐えてきた」 穏やかな口調のまま、彼は言う。 「言いにくかったろう。ありがとう、俺に話してくれて」 そのまま、ゆっくりと俺を抱きしめてくる。 やっぱり、彼に抱きしめられても、体は違和感を訴えなかった。 「全ての痛みを消すことは出来ないと思うが、少しでも」 「わかってる、ありがとう」 撫でながら抱き返す。彼も俺の背中を撫で続けた。 自分の意思ではどうにもならなかった部分が、やっと安堵していた。 この腕の中なら怖くないと、ようやく理解した。 「落ち着いたみたいだな」 彼も気づいたみたいで、穏やかに言う。 「ありがとう、もう大丈夫」 「ならよかった」 「うん」 「出来ることなら、お前をレイプした奴を捕まえて、ぶん殴ってやりたいくらいだ」 「……うん」 「殴るだけじゃ足りないな。肉体的にも社会的にも抹殺してやりたい」 こいつの権力じゃ、やろうと思えば出来なくもないだろう。 「それじゃあ逆に捕まるぞ」 だんだん口調に怒気を帯びてきたので嗜める。 「もちろんやらないさ。性犯罪者のために俺の人生を棒に振りたくはないからな」 「そうだよ。怒ってくれるだけ嬉しいよ。ありがとな」
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