甘い蜜と午後3時

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「せっかくバカンスに来てるのに、何浮かない顔してるのぉ?」 シェフは何も知らないから、相変わらずご機嫌麗しく、今日も爽やかなハニカミ笑顔を向けて来る。 「いろいろあったんだよ」 シェフお手製のオリジナルカクテルを飲みながら、カウンターに突っ伏す。 グラスホッパーを辛くしたような感じで、結構俺好みの味。お代わりを促されて、遠慮なくもう一杯拝借した。 「もしかして、腰が立たないくらい抱かれたとか?」 何にも言ってないのに、びっくりした顔をして言う。爽やかな顔してサラッとエグいこと言うのね。 「んなわけないじゃん!そういうのじゃなくて」 「じゃなくて何よぉ~」 「うーん、まぁ、ほら」 どこから何を話したらいいんだ。 それだけでウンウン唸ってしまったところを、お腹痛いの?と心配された。 「あのさぁ、ちょっとワケあって、最近手首にキスされてんのね」 いろいろと割愛して、要点だけ絞る。 不思議そうな顔をしてたけど、とりあえず飲み込んでくれた。 「手首ね? それがどうかしたの?」 「仕方ないんだけど、俺手首にキスされんのあんま好きじゃないのね」 「そうなの?」 「そうなの。どうしたらやめてくれっかなって」 ふーん、と相槌を打つ。
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