甘い蜜と午後3時

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「あのさ、俺のどこでもいいから、キスしてくれない?」 言いながら、目の前に立った。 彼はワイングラスを持ったまま、俺を見て目を丸くしていた。 「なんだって? キス?」 「キス」 「どうしたんだハニー、謙虚なお前がそんなに娼婦みたいに積極的になって。大丈夫か?」 例えが悪すぎる。 「娼婦じゃねぇよ、ただキスしてくれって言ってるだけだ」 酒飲んでるとはいえ、いきなりキスしてくれっつうのもおかしいか。 「いや、キスならいくらでもやってやるが」 「じゃあやって。ほれ」 立ったまま大の字になる。彼は立ち上がり、不思議そうな顔をしたまま俺を抱きしめてきた。 一番初めにキスしたきたのは、首筋。 その次が唇、そして喉。 「んっ」 声を殺しながら耐える。厚い唇が触れるたび、体が震えた。 しっかり抱きしめられた体をくねらせる。彼は俺の体を離さず、キスを繰り返す。自分からやれと言ったくせに嫌がってしまった。 「もぉ、くすぐったいっ」 無理やり体を捩ると、ちょうど下半身辺りに、纏わりつく硬さと熱を感じる。 「えっ」 ギョッとして背筋が伸びる。彼がキスを止め、大きくため息をついた。 「すまない、体が正直なもんでな」 「あ」 皆まで言わずとも察した。
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