甘い蜜と午後3時

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奴がさっきキスしてきたのは、首筋、唇、喉。 「えーと、まず首筋はー……」 首筋のキスの意味は、執着。 「はーん」 わかる気がする。 続けて喉も見てみると。 喉は欲求。 「おもしれえなぁ」 ハハッと軽く笑ってしまった。そのまま彼と俺の関係を表してるような気がしてくる。 では、肝心の手首はというと。 欲望。 「………」 欲求とカブってない?大体意味似たり寄ったりじゃん。 ただ、言い得て妙というか、俺たちの関係において、欲望の全てが俺の手首に詰まっていることは間違いない。 少し楽しくなるんじゃないかしら、とシェフは言っていたけど、多少気分転換できた気はした。 「はーあ、頑張るか」 スマホを放り出し、自分の手首にキスする。 (早く良くなってくれ) 自分に願いながら目を閉じる。 そのままウトウトして、ソファで眠ってしまったのに気づいたのは、翌朝早くのことだった。
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