甘い蜜と午後3時

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ベッドの上できちんと布団を掛けられていて、隣で何も掛けずに彼が寝ていた。 (……やっちまった) 多分ここまで抱き抱えて連れてきてくれたんだろう。 彼は眠っている。起きる気配もない。 ベッドを抜け出して、布団を掛けてやる。 部屋を出るとすぐに外で、少し冷たい海風と上ったばかりの太陽の熱がアンバランスだった。 「っ、んー」 大あくびこきながら伸びをする。 日本を離れて、なんだかんだいってもう2週間くらい経っていた。 あと2週間もしたら日本に帰るのだけど、もう完全に休みボケしてしまっていて、日本に帰ってもすぐに日常生活には戻れないと思う。 ここにいると彼がとことん甘えさせてくれるし、店に行けばドレスコードでウン万円するシェフの料理も食べ放題。ハウスキーパーが毎日隅々まで掃除してくれるし、何の不自由もない。まさに夢の生活だ。 (ただなぁ) それに甘えすぎてしまっているのも事実。 彼のとこれからの関係を考える上で、ずっとこんな夢みたいな生活を続けるわけにはいかない。 彼には彼の、俺には俺の生活と人生がある。そこに友情では処理できない感情が芽生えている以上、場の雰囲気に流されるより、少しでも自分の実生活とすり合わせながらこの関係を冷静に考えないといけない気がする。 この場で出来る自分のルーチンワークを思い巡らせた結果、たどり着いたのは、トレーニングと得意のアレだった。
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