甘い蜜と午後3時

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適当に挨拶も切り上げて、例のアレのために彼に頼みごとをしなくては。 「あのさっ、ちょっとキッチン貸してくれない? あと材料も買いに行きたいんだ」 彼は朝食の支度をしながら、背中越しに「What?」と聞き返してくる。 キッチンとの境のガラス窓を開けてもう一度言う。 「キッチン借りたいんだ、パン作ろうと思って」 改めて言うと、ミルク入りのガラス瓶を持った彼の手が止まった。 「おいマジかよ!ついにあのニーサンパンが食えんのか!」 しまいにAmazing!とか言いながら超いい顔で笑ってる。 「そんな大したもんじゃねーって、ただのパンだから」 「俺にしてみりゃ、アニメの中の食べ物が目の前に出てくるようなもんさ!」 「だから例えがおかしいって」 俺にはただのライフワークだけど、ネットの世界で知った奴にはそう感じるのかもな。 いつ作るんだ?と子供みたいに目を輝かせている。 「材料買ったらすぐ作れるよ、今日でも明日でも」 「じゃあ朝食食べたらさっさと買いに行くぞ!ちょっと離れたところにスーパーマーケットがあるからな!」 この島のスーパーで物が揃うのか心配だったけど、聞けば欧米に数店舗あるセレブ向け超高級スーパーだそうだ。なら大丈夫かも。
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