甘い蜜と午後3時

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「へー!すげぇな、見たことねぇよこんなの」 アクセサリーとかジュエリーに全く興味なかったもんだから、本当に見たことない、いいデザインだと思った。 彼はまるで遠くのボールを拾って来た犬のように、得意げにしていた。 「だろ、ちょっと工房にこもるから、その間ちょっと待っててくれないか」 「工房?」 ここにはそんなものもあったのか。 「工房ってくらいじゃないけどな。もともと書斎にするつもりだった部屋を少し改装したんだ」 狭いしごちゃごちゃしてるから、俺を入れることはできないそうだ。 「日本にそういう童話があるだろ、鳥が出てくるやつ」 「鳥?」 「鳥が着物作るやつ」 「鳥が着物? もしかして鶴の恩返しか?」 「そう、それだ!中に入って来ないでくれよ!」 「お前が鶴かよ」 こんなゴツくてデカい鶴いねぇだろ。思わず吹き出した。 「わかった、じゃあ覗かねぇから」 「そうしてくれ、見られたら恥ずかしいからな」 とか言って、こいつ俺がパン作るところはしっかり見てたんだよな~。なんて思ったりして。 まぁいいや、小物作り見てたって眠くなりそうだし。 「じゃあその間、また適当に運動してようかな」 久しぶりの筋トレやったせいか、体が解れてノッてきていた。 軽くプールで泳ぎたいと言ったら、裸が見られるなら大歓迎だとバカなことを言っていた。
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