甘い蜜と午後3時

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「おい、風邪引くぜ」 「…………ん」 スッと目を開ける。思ったより寝覚めもスッキリしている。それとなくパーカーをかけられていた。素肌にそのまま袖を通す。 空はすっかり夕焼けの紅で、西側を見ると遠くに夜闇を連れて来ていた。 「ごめ、寝てた」 目をこすりながら伸びをする。その手を取られて、手首にキスされる。 体が震えることは少なくなって来たけど、まだやっぱり抵抗がある。 (……あれ) でも、今は違った。 手首をさすっていると、俺の様子をさておいて、彼は「寝起きで悪いが」と言った。 「ちょっと見て欲しいものがあるんだ」 「何……?」 違和感に気を取られて、言われたことが頭に入らないまま首をかしげる。 「立てるか?」 人差し指を動かして、立つように指示する。よくわからないまま立ち上がると、そのままお姫様抱っこ状態に抱き抱えられた。 「うわっ!」 さすがに目が覚めた。いとも簡単に抱き上げられる。落ちないように首に抱きつくしかなくて、縋るようにしがみ付いた。 「そんなにしがみ付かなくたって大丈夫さ、何があっても絶対落とさないから安心してくれ」 抱き上げて、どうにかすることを前提で話す。 「いや、そうじゃなくて何なんだよ急に、下ろせって!」 そもそもなんで抱き上げられてんだよ。理由もわからないのに、彼は俺を抱えたまま歩き出す。 この体勢めっちゃ怖い。落ちそうでホント怖い。彼はそのまま、入り口と反対側にある裏口みたいな方に向かっていく。 「少し目を閉じていてくれ」 この状態で目を閉じろとは、怖さ倍増なのわかってんのかこいつ。
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