甘い蜜と午後3時

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「どうしたんだ? これじゃあ気に入らないか?」 「なんでもねーよ」 乙女かよ。 一瞬でも自分らしくないことを思ってしまったことを後悔した。 なんだか指がすうすうして、もどかしくて合掌するように手を握る。 「デザイン通りですごくいいと思う、可愛いよ」 気を取り直して、思ったままに感想を伝えた。彼はえへんと胸を張った。 「だろ、頑張ったんだぜ。全部丸く削るところからスタートだったからな」 「はぁー、マジか、すげぇな」 「宝石を樹脂で固めて、ダイヤモンドでコーティングしたんだ」 「ダイヤモンド!」 手に取って見せてもらう。空の色を反射して、ここの空気をそのまま詰め込んだみたいに、キラキラと輝いている。 「すげーなー、あのバカにはもったいねぇよ」 「ちゃんと箱に詰めて渡すからな。とりあえず完成品を見せたくて」 「え、この箱じゃないの?」 「これは適当な箱さ。ネックレス用にちゃんと作るよ」 どんだけ準備いいんだよ。しまいにその箱も手作りするとかいうので、また工房に篭ると言っていた。 宝石を削ることも出来てちゃんと箱も作れて、見てないからわからないけど、工房ってのは意外と本格的なものなのかもしれない。 話もひと段落したところで、ふと手首のことが気になって、あのさ、声を上げた。 「どうした?」 「手首がさ、なんか、大丈夫になってきたかも」 「え?」 「さっきキスされたとき、全然体震えなかった」 「本当か!」 彼の目が輝いた。 俺は自分の手首をさすりながら、軽く頷く。
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