甘い蜜と午後3時

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「わかんないよ、さっきそうだったからってだけで、偶然かもしれないけど」 「でも大丈夫だったんだろ?」 「ああ」 確かに、最近トラウマが少しずつ薄まってきていた自覚もあった。 「偶然だとしても、大きな一歩じゃないか! おめでとう! やったじゃないか!」 彼の喜びようったらなかった。 静かな浜辺で、宝くじでも当たったみたいなハイテンションで拳を握ったり空を仰いだりしている。なんだかこっちが恥ずかしい。 「やっぱ俺の作戦勝ちだなー、絶対にクリア出来ると思ってたんだ、お前のトラウマを」 「そうかよ。まぁ、そうかもな」 実際、彼がキスし続けてこなかったら、こんなに早く変化を感じなかっただろう。 「試しにもう一度、キスしてもいいか?」 答える前に手を取る。自分の唇に寄せてキスを落としてきた。 やっぱり、体は全く反応しなかった。 「おいマジかよ、本当にビクリともしねぇじゃねぇか!」 「偶然じゃ、なかったんだな」 自分自身が一番驚いている。 あんなに怖くて嫌だったことをされても、何事もないみたいに体が反応しない。 「もっかいだけ」 言いながら何度もキスしてくるから、さすがにしつこくて振り払ったけど。 トラウマにしてはスピード回復したのは、非日常の世界の中で、だいぶリラックス出来たからでもあるだろう。全ては彼のおかげとも言える。 とはいえ、これが浮世に戻ったらどうなるのかはわからない。 また具合が悪くなるかもしれない。 よからぬ事を思うと、つかさず彼がそれなら!と声をあげる。
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