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美しい夕陽もすっかり海の向こうに沈んだ。長居すると暗くなって別荘に戻るのが大変だ。
裸足だった俺は、また強引に抱きかかえられて別荘に戻った。今度は怖くなくて、軽く彼の首に捕まったまま、海を眺めた。時々ふわっと香ってくる彼の匂いが心地いい。
「重くない?」
ちょっと申し訳なくて尋ねると
「全然。普段から鍛えてるからな」
とマッチョのテンプレみたいな答えが返ってくる。
再びプールサイドに戻ってくると、食事の支度に来ていたシェフの姿をキッチンに見た。
「早いな、もう飯の時間か」
何気なく彼が呟いたのが聞こえたかのように、シェフがこっちに振り向く。
抱きかかえられたままの俺を見て、おもいっきり驚いた顔をして口を手で覆い隠していた。
「ちょっとお! 見せつけてくれるじゃないのぉ! プールで何してたわけ!」
すごい勢いでこっちに来る。
「なぁ、とりあえず降ろせ」
さすがに恥ずかしくて訴えたものの
「まぁいいじゃないか、見せつけてやろうぜ」
とニヤニヤ笑って、聞く耳を持たない。
「ちょっとビーチに行って来たんだ。うちのお姫様が裸足だったもんでな、抱きかかえて」
「ヤダァ~! いいわねぇ仲良しで! うちの彼にも爪の垢煎じて飲ましてやりたいわ!」
「お前のとこだって相当イチャイチャしてるくせに。知ってるぞ」
「そりゃあまぁ、まあね。ふふっ!」
シェフは相変わらずお茶目に微笑んでくる。
彼氏はどんな奴か知らないけど、いつもシェフが幸せそうなところを見ると、いい奴なんだろうな。
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