甘い蜜と午後3時

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「よかったじゃないの、仲直りしたみたいで」 やっと地上に降ろされると、シェフがこっそり耳打ちして来た。 仲直りと言われて、何のことか咄嗟には思い出せなかったけど、すぐに手首のことだとわかった。 「いや喧嘩してたわけじゃねぇから」 「まぁ似たようなもんなわけでしょ? とにかくよかったわよ、心配してたんだから」 そしてウインクしてくる。多分本当に心配してくれてたんだろう、数日付き合ってきて、そういう人なのはよくわかっていた。 「おいおい、俺抜きで内緒話かよー」 彼が文句を言っているのを 「もう、ガールズトークなんだから入ってこないでよ!」 シェフが俺を抱きしめながら舌を出した。 「ガールズじゃねぇって」 なんて、この中で一番背が低い俺が言っても効力ないのかもしれないけど。 今日の夕食はシェフの地元、フランス料理のフルコースだそうで、聞けば俺たちが海に向かったのと同じくらいの時間に、すでに支度を始めていたそうだ。 「まぁ、さすがにここは店じゃないから、少し手抜きにはなるけどね。でも腕によりをかけて作ったから!召し上がれ~!」 ちゃっかりパーサーみたいな人もいるし。 「すっげ。俺こういうマナー弱いんだけど」 料理もその通りだけど、テーブルには二股のキャンドルが置かれて、雰囲気も申し分ない。 「マナーも大切だけどな、一番大事なのは美味しいものを美味しく食べることさ」 言いながら、彼は目の前でキチンとナイフとフォークを使っている。 見よう見まねで食べて、美味さにまた悶絶した。美味さで死ぬことがあるなら、この旅で俺は何回死んだことだろう。
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