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「では、僕があなたの気持ちを少しだけ晴らしてあげましょう」
そう言うと男性の体が突然、光輝きだした。
「ま、まぶしい…」
目をつむったが今まで違う明るさを瞼越しに感じた。薄っすらと目を
開けると地下鉄は地上を走っていた。
「室見」から「姪浜」駅の間で地下鉄は普通の電車に変わる。地上に
出るのだ。そのことは以前から知っていたが、実際に地下鉄に乗って
「姪浜」まで来たのは初めてだった。
私は眠っていたのだろうか?電車を乗り過ごしたのなんて何年ぶりだろう。
駅のホームには今までの駅とは違う太陽の光が満ちていた。やっぱり
私は寝ていたようだ。頭がスッキリしているし涙も枯れている。
ただ、夢にしてはあの人はかなりリアルだった。
乗り越し運賃を支払って改札を出た。駅舎から出ると日差しがまぶしく
感じられた。たった一駅なのに地下鉄は私を地上へと運んでくれた。
暗闇から明るい場所に。
完全に気持ちの整理がついたわけではないけど、一つの恋の終わりを
認めることはできたような気がした。
落ち込んだらまた福岡空港からここまで来よう。
気がつくと私の足は軽くなっていた。一駅ぐらい歩いて行けるぐらいに。
【終】
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