『暗闇の世界』へ

5/9
前へ
/9ページ
次へ
地上から地下へと向かうエスカレーターを降りて切符を買う。 改札を抜けてさらに下る。気持ちがどんどん沈んでいった。 ホームには「姪浜(めいのはま)」行きの電車が止まっていた。 私はその1つ前の駅「室見(むろみ)」で降りる。そこが家から 一番近い駅だ。 車内には数名しか乗っておらずガランとしていた。誰も座っていない 座席に一人腰掛けた。今まではいつも隣に彼がいた。そんな思い出が 脳裏に浮かんでくる。 寂しさが胸を締め付けた。また涙が溢れてきた。周りに気が 付かれない様にハンドタオルで目を押さえた。先週一生分の涙が 出てしまったと思っていたのに、まだ残っているらしい。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加