地下鉄の話

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 でも、そういう行動をしている彼を誰も咎めようとはしない。  初めて彼がそこにいることを選んだ日はさすがに怪訝な顔をしていた乗客たちも、いつの間にか彼がそこにいることを許していた。  むしろ、彼がそこにいることを当たり前のこととして受け入れていた。    そんな彼は高校の卒業式の日以降、しばらく姿を見せなかったが、4月になると他の人と同じように、少しだけ変わって電車に乗るようになっていた。  彼は4月からは制服から私服へと姿を変えて乗って来た。  僕はそんな彼を見て月日が経つのはとても早いなって思った。    そうやって彼はいつも眠たそうな表情がほとんどだった高校生から、おそらく大学生になったのだと思うが、新しい世界に飛び込んでいったことで、楽しそうな雰囲気の時や、重苦しい雰囲気、時には笑顔であったりといろんな感情を見せるようになっていた。    そうやって中身がどんどんと変化していくのに、彼は相変わらず連結部分に乗ってぼうっとしている。  彼はいつまでそこに乗り続けるのだろう。  そして乗客たちも彼を初めて見た人は最初こそ驚くが、今ではそうあることが日常だと思っているようだ。
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