6人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
レッスン1
コンクリートの打ちっぱなしの壁には、ボルト固定の棚。そこに幾つかのオブジェと数冊の哲学書。黒い天井にはインバーター制御のダウンライトが施され、フローリングには鉢植えのシマトネリコが配置されている。
我ながら良く出来た居住空間だと思う。この広い空間をプロデュースした自分を褒めてやりたい。
東京のど真ん中の高層ビル。窓から東京湾の見えるこの部屋に無駄なものはなかった。
ベッドから抜け出して、つけっぱなしだったPCの前に座った。
まだ四時。
この季節なると、随分と外は明るいし、遠くから小鳥のさえずりまで聞こえる。
何時間寝ただろうか?新着メールは来てなかった。
カチカチカチとマウスをクリックして、ニューヨークの経済ニューストピックを眺めた。すると突如手前にウインドウが開いた。
──メールが受信されました。
メーラーの受信ボックスには、空メールが一通。差出人はウサギ男とだけある。
仕事の依頼だ。
俺はPCを閉じてシャワーに向かった。脱ぐものはビキニパンツしかない。家では大概この状態で過ごしている。
最初のコメントを投稿しよう!