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何事もなく俺のマセラティは都内に帰って来ることができた。もう真夜中であるのに、様々なネオンが街を彩っている。
マンションの地下駐車場に乗り入れて、エンジンを切った。微々たる音でも反響する筈なのに、今夜は怖いくらいの無音だった。
「ねえシンちゃん、私も殺して貰いたい人がいる」
「バカ。冗談はやめろ」
「でもお金を出せばやってくれるんでしょ?」
「古乃実、やめろ。お前はまだ高校生だ。行くぞ」
車からエントランスまでの距離、僅か30メートル。この間が一番危険な事は判っていた。無論エレベータ内もだ。開いた途端にズドンなんて、お定まりすぎてシャレにもならない。気がつくと、グロック19を握った手に力が入っていた。
幸い玄関の鍵を開けて中に入るまでに、何も変わったことはなかった。この杞憂を喜ぶべきか、それとも不気味と捉えるか悩みどころだ。
「うわっすごい部屋。殺し屋さんて、儲かるのね」
「馬鹿言うな」
俺はバスタブに湯を張りながら、冷蔵庫からハムと冷えたウイスキーのミニボトルを取り出した。
「風呂に入ってさっさと寝るんだ」
「シンちゃん一緒に入ろうよ」
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