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「何があったんだ?何かあったのか?言ってみろ」
古乃実はなかなか噛み締めた口を開かなかったが、黙って見つめる俺に観念したようだった。
「色素性乾皮症。私の病気。症状は様々よ。でも簡単に言うなら紫外線に当ると死ぬ病気なの」
「──紫外線に当ると死ぬ…」
それを聞いて、彼女に抱いていたいくつもの小さな違和感が一つになった気がした。
「──それで地下鉄や夜なのか」
「一生こんな風に生きてくなんて酷。いつも死ぬことしか考えてない」
「古乃実。そんな風に言うな。今後きっと医療の開発で…」
「適当なこと言わないで。そんな話何百回と聞いてきた。小さい頃から。でも何も変わらないよ。変わってないよ」
俺は次の言葉が出なかった。
時計を見ると、深夜の3時。もうしばらくすると夜が明ける。
「──分かった古乃実。お前の望みを叶えてやる。目を瞑れ!」
耳をつんざく銃声が室内に反響した。硝煙の匂いが鼻についた。
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