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確かにはじめは衆目を集めるが、あまりにも派手すぎて、そのうち誰も見向きをしなくなる。これが東京の特徴だ。
「やあ、ウサギのミミーです」
奴はいつもこんな風にやって来る。
それに対して、俺は「知ってるさ」と応える。いつものことだ。
「私であることの証明をしてるのですよ。気にしないでください」
「だったらせめて頭部だけでも、その縫いぐるみを取ったらどうだ」
「それだと私が誰かわかってしまうじゃないですか。この声も変換出来なくなってしまうし」
今日のウサギ男は枯れた声だった。不思議とそれだけで老人と話していると錯覚してしまう。しかしどうでもいい事だ。
「もう殺しは──今回で終わりにしたい」
ウサギ男は一瞬ビクッと反応したが、その後しばらく黙っていた。そして話し出す。
「難しいでしょうね。あなたほど鮮やかに仕事をする人はいませんもの」
「でも考えといてれ」
ウサギ男はクククと笑うが、表情が見えない分気味が悪い。
「さっさと要件を頼む。誰を殺ればいい?」
「今回の仕事は殺しではないんです」
想定外の言葉に俺は眉毛を動かした。
「俺に殺し以外の仕事をやれと?」
「報酬は同じなのでご心配なく」
「金のことを心配しているんじゃない。内容はなんだ」
「レンタル彼氏……」
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