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スマホで到着を知らせると、古乃実はすぐにやって来た。こっち見向かって手を振っている。俺はどうすればいいかわからず、取り敢えず片手を上げて赤面した。
「シンちゃん待った?」
「全然」
「なら良かった。親が手配した車も居たからさ」
「えっそうなのか?ちゃんと言って来たんだろうな」
「何て言うのよ。これから殺し屋さんとデートですから。帰ってそう伝えてくださいって言うの?」
「黙ってきたのか?」
「そう。ホラ、もう心配してついてきてる」
古乃実は、片手でバックミラーを指差した。そこにはジャガーと思われる車のシルエットとヘッドライトが映っていた。
「くそったれ」
殺し屋の俺が尾行されてるだと?ふざけるな。
俺はマセラティのギアを一つ下げて加速した。そのまま高速に乗った。独特の乾いた音が反響する。
「マセラティはフェラーリと同じエンジンだぜ。高速で負けるかよ」
「きゃあ、シンちゃんかっこいい」
古乃実は楽しそうに叫んでいた。
俺はマセラティを操り、首都高からレインボーブリッジを抜けて湾岸線に入った。向かう方角は横須賀方面。ここなら首都高のくねくね道と違って、思う存分アクセルを踏むことができる。
しかし驚いたことに、ジャガーも、異常な加速のマセラティに負けじと食らいついて来た。
「気をつけてね。彼らもプロだから」
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