レッスン1

7/16

6人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
 スマホで到着を知らせると、古乃実はすぐにやって来た。こっち見向かって手を振っている。俺はどうすればいいかわからず、取り敢えず片手を上げて赤面した。    「シンちゃん待った?」    「全然」    「なら良かった。親が手配した車も居たからさ」    「えっそうなのか?ちゃんと言って来たんだろうな」    「何て言うのよ。これから殺し屋さんとデートですから。帰ってそう伝えてくださいって言うの?」    「黙ってきたのか?」    「そう。ホラ、もう心配してついてきてる」  古乃実は、片手でバックミラーを指差した。そこにはジャガーと思われる車のシルエットとヘッドライトが映っていた。    「くそったれ」  殺し屋の俺が尾行されてるだと?ふざけるな。  俺はマセラティのギアを一つ下げて加速した。そのまま高速に乗った。独特の乾いた音が反響する。  「マセラティはフェラーリと同じエンジンだぜ。高速で負けるかよ」  「きゃあ、シンちゃんかっこいい」  古乃実は楽しそうに叫んでいた。    俺はマセラティを操り、首都高からレインボーブリッジを抜けて湾岸線に入った。向かう方角は横須賀方面。ここなら首都高のくねくね道と違って、思う存分アクセルを踏むことができる。  しかし驚いたことに、ジャガーも、異常な加速のマセラティに負けじと食らいついて来た。  「気をつけてね。彼らもプロだから」     
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加