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もう大丈夫だろうと確信する頃には、横須賀インターチェンジの手前まで来ていた。普通なら1、2時間掛かるところを、あっという間の時間だった。そりゃそうだろう。覆面パトカーも軽々振り切るくらいのスピードを出したのだから。
「さてどうするか。とんでもない事になったぞ。俺はこれからあいつらに命を狙われながら生きていくのか?」
「大丈夫。パパに言えばなかった事になるわ」
「そう簡単にいくのか?古乃実に向けて発砲した事がバレる前に、俺たちを始末しに来るぞ」
「ええ!ほんとに?やばいじゃん」
古乃実は両手の平を、頬に当てて眉尻を下げている。
どう見ても、本当にやばいと思っているようには見えなかった。
「じゃあシンちゃんのお家で匿ってよ」
「どういう意味だ?レンタル彼氏はそんなこともするのか?契約違反になるぞ」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ。早く行こうよ」
「淫行条例に引っ掛かっちまう」
「そんなこと気にするの?殺し屋が?変なこと言わないでよ。もう」
俺は生返事をしたものの、どうするか迷っていた。しかしこのまま横須賀にいても埒が明かないし、どっちみち帰る事には変わりはないのだ。
俺は仕方なくUターンをして、再び今来た高速道路を引き返した。
もしまた追手と遭遇した場合には逃げやしない。本気で殺り合うつもりだった。
しばらく走っていると、古乃実が呟いた。
「殺し屋さんの仕事って、やっぱり夜が多いのかな」
「──夜は隙が生まれやすいからな」
「ふうん。そうなんだ。ねえねえ、私やってみたいな」
「──何を言っている」
「殺しの仕事…やってみたいな」
「……」
俺は古乃実の言葉を無視した。やはりレンタル彼氏なんて仕事を引き受けるべきではなかったと後悔した。
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