思い出は遠い夏の空

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僕の名前はソラ、犬です もうどれくらい前になるのかな その日もちょうど今日みたいな 青い空にうだるような暑さで もう一歩も動けなくて このまま目を閉じてしまおうと思ったあの日 僕はおばあちゃんに拾ってもらった それからの時間は本当に楽しくて 二人でいろいろなことをお話して たくさんの時間を過ごした だけどそんな幸せな時間も終わろうと している ベッドで眠るおばあちゃんはとても静かで もうお話はできない でも大丈夫だよ 僕が最後までここにいて ひとりぼっちにしないから 今日は本当に暑い 少し体がひりひりとするくらいに 僕がおばあちゃんを見つめていると 急にセミの声が聴こえなくなった 世界が止まった、そう思った するとどこからともなく 「ソラ」 なんだろう、優しい声が聴こえる 「ソラ、どうしたの?」 縁側の先を見ると、そこには女の人がいた 「ソラってば」 僕は知っている その声、その仕草、その匂い 不思議に思ってベッドに目を向ける どうしてだろう、よくわからない
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