第二章:07

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「そうだ。これに乗っていれば、おまえの姿でもちょっと変わった  バイクスーツ姿として見咎められまい」 「……一応、擬態機能はあるのだが」 フェイスには人間に欺瞞する機能がある。人間社会に潜伏する専門連中と比べると きわめて簡素なものだが、それでもその気になればそのあたりの道を 歩いてもバレはしない。 もっとも、それはあまりやらない方がいいだろう。戦闘用のフェイスに備えられた 擬態機能は、数種類のテンプレートを組合わせることしかできない。フェイスなら、 すぐに見つけてしまうおそれがある。 「おい、ちょっと待て……待ってください。いきなりそんな、  扱いづらそうなものをあてがうのは……」 「問題ない。乗れる」 「……え?」 火之夜が珍しくほうけたような声をだす。 「フェイスは、生まれたときにあらかじめさまざまな知識と技術を  インプットされている。機械操作もそうだ」 供与されたということで遠慮なく黒いバイク――I-I2にまたがり、 キックペダルを蹴ってエンジンをかける。 グオォォォォン! と重厚かつ甲高い響きをあげて、バイクがうなる。 「熟練者と張り合うには、相応の習熟が必要だが。  一般的な操縦なら、最初からできる」 周囲の人間を促して退かすと、軽く試乗してみる。 ほんの少し、加速させただけだが確かに早い。 低速からでも一気にスピードをあげられそうな気配が感じられる。 やや癖はあるものの、抑えられないほどでもなさそうだ。 「悪くないな」 「おーー! いいねえサマになってるじゃん!」 「ほう。初見でこいつを乗りこなすとは。――なかなかやるではないか」 なぜか得意げになる桜田と御厨。そんななか、火之夜だけは ぽつねんと取り残された子犬みたいな表情をしていたのが、印象に残った。 ・・・
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