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ジュース片手に組み手を見学していた桜田が説明する。
彼女はこのCETで偵察を担当しているそうだ。フェイスダウンも偵察部隊の情報は
認知していたが、どうもアルカーに執着するあまりそちらは軽視する傾向にあった。
しかしこうして裏から見ると、アルカーの行動は彼女たちによって
支えられてきたことが、よくわかる。
ぴこぴこと、口にくわえたストローを動かしながら器用にしゃべる。
「といってもねー、ホントに勉強教えるだけだし。友達もいないし」
「……本人は"いつものこと"だそうだ。友人がいないのは……」
上半身裸で座り込んでいる火之夜が、さみしそうに呟く。
学校という概念はよくわからないし、友人というものもよくわからない。
だが彼の横顔を見れば、それが彼女にとって自然な状態とはいいがたいと、察する。
「だから、ね。ノーちゃんがあの子の相手をしてくれて、とってもうれしいの。
……私にも、あの子が喜んでるってわかるから」
「……そうか」
めずらしく真面目かつ柔和な顔で、桜田が微笑む。火之夜もだ。
不思議な気持ちだった。悪の組織で戦闘員として生まれた俺が、
――こうして、人から笑顔を向けられるとは。
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