魅惑の海水浴

2/2
前へ
/2ページ
次へ
去年は冷夏だった。その上天候の悪い日が続き、中々楽しめなかった。毎年楽しみにしている身としては、期待を裏切られて、気持ちが冷めてしまったぐらいだ。だからこそ今年は思いっきり楽しんでやる。 おや、はしゃぎすぎていい大人が砂浜で転んだ。怪我をしたようだが、そのまま海に入って来た。これはいけない。海水は傷口にしみるし、血が止まらなくなる。そんな初歩的なことすらわからないのか。それともわかってはいるが、海の魅力を前にして入らずにはいられなかったのだろうか。まあ、気持ちはわかる。波の音や潮の香り、どこまでも広がる海の壮大さは気分を高揚させるには十分だ。高まる気持ちをコントロールするのは難しい。特に鼻先になんとも香ばしい香りが漂ってくると余計にだ。そろそろ昼時だ。海の家の前にはすでにたくさんの人が並んでいる。これからもっと列は長くなるだろう。しかし、待つなんてできない。去年みたいにさめざめと泣くことになるのだけは御免だ。自慢の肌も乾いてしまう。さあ、彼らが海から上がってしまう前にいただいてしまおう。 ――誰からにしようか? 終わり
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加