葛藤の末に

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葛藤の末に

 自宅に戻って説明書を確認する。 『幽霊タッチ』 3つ目の道具だ。  それは瞬間接着剤の様な容器に入った液体だった。 これを1滴水に溶かし、人に浴びせると、その水を浴びたものは 幽霊と接触が出来るようになるらしい。 逆に言えば、幽霊も人に触れられるようになるという事だ。 水の量は、お風呂1杯分くらいまで薄めても大丈夫だという。  つまり、恨みを持つ相手のお風呂に1滴垂らしておけば 幽霊の側からその相手の首を絞める事も叶う。  でも、こんな事させてもいいのか? 迷った挙句、「その」道具を手に持って、僕はカレの待つ場所へと向かった。 「これで、僕の願いが叶うのか?」 「・・・そう・・・だよ」 僕はカレの目の前にその道具を差し出すと ゆっくりと振って見せた。 「こ、これは」 カレの姿が少しづつ薄くなっていく。 「なんだか気持ちいい」 その表情が少しづつ穏やかになっていくのが分かった。 「もう、恨みとかどうでもいいか」 最後には満面の笑顔を浮かべながら、彼は目の前から消えた。 「さよなら、お兄ちゃん」  僕が持って行ったのは4つ目の道具 『幽霊フライ』 それは鈴の形をしていた。 『この鈴の音を聞くと、全ての未練が消え、幽霊を成仏させることが出来る』 そんな風に説明書に書いてあった。
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